WEEKLY COLUMN
名画を彩るカクテル #03
南国ムードの「キューバ・リブレ」に潜む様々な思惑

好奇心に背中を押され、危険を孕む世界に興味を抱く男性は少なくないでしょう。マフィアを題材にした名作はその好例。
それらの作品を語る上で、欠かすことのできない要素がお酒です。
今回取り上げるのは『ゴッドファーザー PARTⅡ』。家族を守るため裏社会の世界でのし上がっていく男と、その父の前半生で構成された作品は、公開された年のアカデミー賞の主役となりました。
各シーンで演者たちはよくお酒を嗜んでいますが、その裏には表面上では見えてこない様々な思惑が入り乱れているのです。

裏社会の中で複雑に絡み合う男たちの策略

映画『ゴッドファーザー PARTⅡ』

1974年公開(日本では1975年公開)
監督 フランシス・フォード・コッポラ
出演 アル・パチーノ ロバート・デュバル ロバート・デ・ニーロ ほか

1972年に公開された『ゴッドファーザー』は、1973年のアカデミー賞の8部門にて10ものノミネートを数え、作品賞、主演男優賞、脚本賞を獲得。その後、続編が制作されますが、得てして続編は周囲の期待に押しつぶされるケースもあります。
しかし、『ゴッドファーザー PARTⅡ』には、その一般論は当てはまりませんでした。結果、アカデミー作品賞をはじめ、合計6つの賞を受賞する名誉を得たのです。

『ゴッドファーザー』では、マーロン・ブランド演じるヴィトー・コルレオーネが巨大マフィアを形成していくまでの後半生を描いていますが、PARTⅡでは、その三男、マイケル・コルレオーネが父の跡を継ぎ組織を守るために奮闘する姿と、ヴィトー・コルレオーネの幼少時から成り上がるまでの前半生を描いた二部構成となっています。
今回取り上げるのは、その前者にあたる部分です。

父の跡を継ぎドンとなったマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)は、NYからネバダへと拠点を移し、強大な権力を誇示するかのように盛大なパーティを催します。そこへ縄張りであるNYを仕切っているフランク(マイケル・V・ガッツォ)が訪れ、幅を利かせるようになってきたロサト兄弟への対応策を相談するのです。
ただ、兄弟のバックにつく裏社会の大物、ロス(リー・ストラバーグ)と手を組もうとしていたマイケルは、怒りを鎮めるよう諭すのでした。その晩、突如襲撃を受けたマイケルは、マイアミにいるロスと面会。襲ってきたのはフランクだと語り、暗殺することでロスと合意します。その足でフランクの元を訪ねたマイケルは、襲ってきたのはロスの差し金であると異なることを口にし、ロサト兄弟と話をつけロスを信用させてくれと依頼。フランクはロサト兄弟と会い、話をつけようとしますが、逆に殺されかけます。運良く警察に発見され一命を取り留めますが、胸中にはマイケルへの不信感が募っていくのです。
その頃、マイケルはというと、アメリカから支援を受けていた政府と、反ゲリラ組織の対立が激しさを増すキューバにいました。ハバナでの事業をマイケルに譲ると語るロスは、裏でマイケルにキューバ大統領へ渡す賄賂を準備させます。その金をマイケルの兄であるフレド(ジョン・カザール)がキューバへと運んでくるのですが、フレドとの会話からマイケルはフレドがロスと繋がっていることを確信するのです。

自由の象徴であるお酒に見え隠れする主人公の胸中

[キューバ・リブレのレシピ]

①氷を入れたタンブラーを準備する。
②そこへ、ラムとコーラを注ぎよくかき混ぜる。
③最後にライムを搾りひと混ぜして、乾杯。
※好み、グラスに合わせてそれぞれの量を変更するのも可。

『ゴッドファーザー PARTⅡ』の劇中ではお酒が登場しますが、これが物語を味付けする巧みなアクセントになっているのです。
お金を運んできたフレドがオーダーしたバナナダイキリは、彼の気弱な性格を象徴する心憎い演出でした。マイケルが唯一信頼を寄せる部下であり、義兄弟でもあるトム・ヘイゲン(ロバート・デュバル)へ勧めたのは高級ブランデーで知られるコニャックのクルボアジェ。
そして、マイケルが自身の裏切りに気付いたことをツユほども知らないフレドがマイケルへ勧めたお酒が、「キューバ・リブレ」です。

キューバ・リブレは、別名ラム・コークとも呼ばれ、ラムとコーラ、そしてライムで作るシンプルなカクテル。
そのルーツは古く、1902年頃のキューバといわれています。アメリカの支援もあり19世紀末に起こった第二次キューバ独立戦争でスペインからの独立を果たしたキューバの人々は、自国で作ったラムをアメリカのコーラで割り独立を祝ったのだとか。
そして、“キューバの自由”という名をそのカクテルに命名。以後、世界各地で広く飲まれるようになりました。

自身を裏切った兄を、マイケルはどのような気持ちで見つめていたのでしょう。嗜んだお酒はいかにも南国の、トロピカルな味わいですが、その奥に憎悪が渦巻いていたと考えると、そこで描かれたコントラストは秀逸そのものだといえるでしょう。そんな演出もまた、作品を盛り上げる重要な要素。
それらを知ることで、また名作をより深く、そしてお酒をより美味しく楽しむことができるのではないでしょうか。